伊勢昆布の歴史

(1)伊勢昆布の歴史行商から1世紀 乾物で和食の伝統文化を守る「伊勢昆布」 

初代のイメージ

伊勢昆布は現在、三重県北部に4店舗とアンテナ店が5カ所あります。創業は大正15年(1926年)に遡り、現店主の祖母が行商を始めたのがきっかけです。当時は三重の海産物を長野や新潟などの山奥へ運び、代わりにその土地のものを持って帰ってきていました。 そして戦後、本格的に営業を開始。しいたけ、海苔、にぼし、かつおぶし、あられなどの乾物は、そのころから変わらずロングセラーです。【かんぴんたん】とは三重の浜エリアの言葉で、カピカピまで干からびる状態のこと。

乾物屋の店名にちょうどいいかなと思っています。 現当主は1991年から家業に携わった3代目。お客さまの笑顔が見たい、親からの想いを大切に引継ぎたいと日々価値の追求を続けてきました。その結果、伊勢昆布は約1世紀に渡り皆さまにご愛顧いただけております。現在は次世代である4代目へ、代々受け継がれた目利きの技、生産者とのつながりを伝承中です。 時代の移り変わりとともに、ときには「いまどき、乾物はもう食べる人がいない存在なのかも」と不安に思うこともありました。

そこで一念発起して当店の乾物を使った和食ビュッフェのレストランを開店。自分の目で真偽を確かめたかったのです。調理に工夫を凝らし、「しいたけは丸のままより切ったほうが好まれる」などのノウハウも集めていきました。その結果、おかげさまで本業がおろそかになるほどの人気店に。ホテル内にあるのですが、周辺のホテルからもわざわざ来て頂けるなど大人気となり、美味しいものであれば老若男女関係なく食べていただけると確信しました。乾物は時代を越えて愛されるものだという実感を抱いて。

当店では自分や家族の健康が気になる方、元気な赤ちゃんを産みたい妊婦さんなどにぜひ食べていただきたいものをとりそろえています。和食は日本の伝統文化。ただ、出汁から用意する和食をつくるのは少し時間がかかります。核家族化が進んで、乾物の食べ方を知らない方も増えたかも知れません。でも忙しい現代だからこそ、ひと煮立ちさせて出汁をとる時間がていねいな暮らしをつくり、日常を豊かにするのではないでしょうか。

古来より、海と山の恵みをふんだんに受け取って暮らしてきた、私たち日本人。乾物は身近にあったそれらの恵みを、余すところなく使いきれるように考え出された自然食です。太陽の光が水分を飛ばして素材の旨味を凝縮し、栄養価も上げます。また、長期保存できる状態にするのですが乾燥のため、無添加で保存できます。

例えば、妊娠期は、出汁をかつお節や煮干しなどからとるのがおすすめ。かつおや煮干しには鉄分が多く含まれるので貧血になりやすい方にもぜひ食べていただきたいです。妊婦さんはカルシウムが不足しがちになるので無塩タイプの煮干しや小魚、アーモンドなどをおやつにするのもいいですよ。たんぱく質やDHA、EPAなども一緒に補給できます。 自然なものを身体に取り入れることで、心身ともにおのずと整ってきます。かんぴんたんの乾物はどれも店主が生産地まで足を運んで目利きしてきた厳選品です。ぜひお試しください。   

(2)伊勢の海海産物を育てる栄養豊かなリアス式海岸 

伊勢昆布(かんぴんたん)で扱うアオサノリ、ちりめん、わかめ、海苔、ひじきなどは、濃尾平野を流れる木曽川、長良川、揖斐川からの豊かな恵みを受ける伊勢湾や、リアス式海岸で天然礁が広がる鳥羽・志摩地域で作られています。リアス式海岸は山と近い分栄養が豊富に流れ込み、動植物が繁栄しやすいのが伊勢湾の特徴です。 

特にアオサノリは全国の60~70%弱を産出しており有名です。アオサノリはロープに種を植えて養殖するのですが強い流れに弱いので、養殖環境には潮の流れはありつつも強い流れにさらされないリアス式海岸の複雑な形状が適しているのです。養殖中はアオサノリについたバクテリアを落とすため1日に1~2回、空中に引上げることが必要です。湾内の干満差が激しいところでは50~60cmも一気にひき、1日に1~2回勝手に干してくれるのです。

 また、ちりめんの漁場は神島エリアです。リアス式海岸で海藻がたくさんあると餌場にもなるし小魚の隠れる場所にもなります。神島を中心にした太平洋の外海と伊勢湾の内海の混じるところは、知多半島から伊勢まで、見えている島の下で山脈のようにつながっていて、その間に漁礁があります。黒潮が入ってきて巻き込み、潮の干満で海底が上がってくると小魚が溜まって餌場になります。海の豊かさはちりめんはもちろんひじきや海苔などの旨味にもつながります。

答志島