伊勢昆布の成り立ち

行商から始まって約1世紀
乾物で和食の味と健康、
伊勢の自然を守る

伊勢昆布の創業は大正15年(1926年)。三代目の祖母が行商を始めたのがきっかけです。なぜ伊勢湾では昆布は取れないのに伊勢昆布という名前なのか。三重を中心に北海道から九州までの海産物を長野、新潟などの街へ行商。いつしか「伊勢の昆布屋さん」と呼ばれていたことが店の由来になっています。海産物を売った帰りには、その土地のものを仕入れて商いをしつつ帰って来ていました。
戦後に本格的に営業を開始。時代の移り変わりとともに、時には「いまどき乾物は食べる人がいないのかも」と不安に思うこともありました。しかし海外で和食のブームが起こり、ユネスコ無形文化遺産登録。食事や調理法が見直される中、昔ながらの出汁が注目され、フランス、イタリアなど欧州、シンガポールからも注文や問い合わせをいただけるようになりました。乾物は海と山の恵みの産物。日本の食の知恵の結晶、優れた自然食。自然の恵みも守る大事な文化です。

海産物を抱いて山と川の恵みを注ぎ
栄養豊かに育むリアス式海岸

伊勢昆布では『黄金だしのもと』『天然だしのもと』『生ふりかけ』以外にもたくさんの海産物や乾物を取り扱っております。古より朝廷や伊勢神宮に食品を献上してきた伊勢は、全国でも有数の良質な海産物がとれる土地です。アオサノリ、ちりめん、わかめ、海苔、ひじきなどは、濃尾平野を流れる木曽川、長良川、揖斐川からの豊かな恵みを受ける伊勢湾や、リアス式海岸で天然礁が広がる鳥羽・志摩地域で作られています。湾や入り組んだ地形のリアス式海岸に抱かれた動植物は、山の養分を多く含む河川水と黒潮が混じり合う海水を注がれ、やさしい潮の流れの中で栄養たっぷりに育まれます。

素材のよしあしから干し方まで
幼少期より叩き込まれた目利きの技

昆布やアオサノリなど海産物も、しいたけも1年から数年がかりで作られています。生産者が丹精込めて育て、収穫して加工した乾物たちを粗末に扱うわけにはいきません。割れたり崩れたりしないよう、包み込むように優しく扱います。三代目店主の手さばきや目利きは父親譲り。職人気質な父は丁寧に教えてくれはしません。乾物を扱う手元を観察し、父が言葉にした、数少ない助言から学びます。

生産地を知り、生産者の信頼を得て良いものをお客様へリーズナブルに

生産者の方々について知ることも、乾物屋の大事な仕事です。父の代からお付き合いしている方も多いですが、代替わりの際には1軒ずつごあいさつしました。今の代で開拓した方もいます。知り合いのツテをたどってご紹介いただき、現地に足を運びました。現場では生産現場を確認し、必ず試食もします。時には漁船に乗せてもらうことも。
生産地を知り、生産者の方と仲良くなり、加工前の食材を知ることは、良いものをリーズナブルに仕入れられることにつながります。例えば当店のわかめは2月初めに収穫したものです。一般的なわかめは3月まで待って大きくなったものを収穫しますが、まだ若い時期の方がしっとりと柔らかく風味がいいのです。

お客様の笑顔を見たいから
毎日お店に立っています

乾物は、的確に使うと料理の風味を深く豊かにします。しかも冷蔵庫なしで長期保存がきき便利です。でも食べ方をご存じない方も多くなってきました。そこで当店ではただ販売するだけでなく、店主が毎日店に立っておいしい食べ方や使い方を説明しています。
常連のお客様の娘さんがご結婚し、妊娠を期に常連になってくださることもあります。小学校の社会見学で訪れた子どもたちが、乾物に興味を持って食べるようになったとハガキをくれることも。地元のお客様が購入して県外のご家族やお友だちにお送りし、もらった方が買いにいらっしゃることも。どれも非常に励みになりますし、いいものを取り揃えておいて良かったと思います。店主はただお客さんと接するのが好きで、喜んでもらうのが嬉しい。「自分が食べたい」「家族や大切な人に食べてもらいたい」と思えるものを、普段使いできる価格でご提供し続けていきたいと考えています。